ソン・フンミンがアメリカで新シンドロームを巻き起こす…「メッシ、ペレ級の偉業」と現地メディア絶賛

現在、米メジャーリーグサッカー(MLS)のロサンゼルスFC(LAFC)に所属するソン・フンミン(33)が、アメリカ全土で「ソン・フンミン・シンドローム」と呼ぶべき社会現象を巻き起こしている。その影響力はピッチの中にとどまらず、クラブのブランド価値、さらにはリーグ全体の注目度をかつてないレベルにまで押し上げている。
メッシ、ペレに並ぶ歴史的影響力
米大手メディア『スポーツ・イラストレイテッド』は15日(日本時間)、「ソン・フンミンの存在は、チームメイトだけでなくLAFC全体を世界的なレベルに引き上げた。これはかつてペレが所属したニューヨーク・コスモスや、リオネル・メッシが加入したインテル・マイアミの時代を除けば、アメリカのサッカーチームが成し遂げられなかった成果だ」と報じた。
同メディアが言及したニューヨーク・コスモスは、1975年に「サッカーの王様」ペレが加入したことで世界的な名声を得たクラブ。ソン・フンミンのLAFC加入は、それに匹敵するほどのブランド価値向上をもたらしたと最大限の賛辞を贈っている。
監督たちが絶賛する「完璧な選手」
LAFCを率いるスティーブン・チェルンドロ監督(46)も、ソン・フンミンの影響力を強調する。「彼がもたらす試合のエネルギーが素晴らしい。アメリカのコミュニティが彼を応援するためにスタジアムに足を運び、同時にLAFCのサポーターとなってくれる光景は非常に印象的だ。韓国の店舗でもLAFCのユニフォームが飾られていると聞いた。これはMLSにとって、そして何より我々のクラブにとって驚くべきことだ」と語った。さらに、「ソン・フンミンはファンやチームメイトへの接し方も素晴らしい選手。常に親切で心優しい。彼と共に戦えることを嬉しく思う」と付け加えた。
その評価はプレー面にも及ぶ。「彼は代表チームでもLAFCでも、常に安定したプレーを見せている。彼をゴール可能なポジションに配置することは非常に簡単だ」と戦術的な貢献度を高く評価。続けて、「彼はスプリンターだ。決して遅いスピードでプレーすることはない。常に速く、クリーンで、力強い。どんな時も相手の脅威となる選手だ」とそのプレースタイルを絶賛した。
対戦相手の監督までもが、ソン・フンミンに魅了されている。サンノゼ・アースクエイクスのブルース・アリーナ監督(74)はMLSの公式チャンネルを通じて、「彼はファイナルサードで極めて危険な選手だ。彼の技術、スピード、そして献身性はすべて尊敬に値する。完璧なプレーヤーであり、彼と対戦することは大きな挑戦になるだろう」と最大限の警戒心を示した。
電光石火のMLS初フィールドゴール
ソン・フンミンは、その評価が本物であることをピッチで証明した。14日、カリフォルニア州サンタクララで行われたMLSレギュラーシーズン、サンノゼ・アースクエイクス戦に先発出場すると、キックオフからわずか52秒でゴールネットを揺らした。左サイドを突破したアルテム・スモリアコフからのグラウンダーのクロスを、ゴール前で冷静に右足で合わせ、チームに先制点をもたらした。
このゴールは、ソン・フンミンにとってMLS移籍後初のフィールドゴール(前回のゴールはフリーキック)であり、彼特有の鋭い走り込みとポジショニング、そして冷静なフィニッシュワークが光る得点だった。この先制点を皮切りにLAFCはゴールラッシュを見せ、4-2でサンノゼに快勝。シーズン成績を12勝8分7敗(勝ち点44)とし、ウェスタン・カンファレンス5位の座を奪還した。
統計サイト『FotMob』は、ソン・フンミンに攻撃陣で2番目に高い7.7点の評価を与えた。彼の貢献はゴールだけではない。中盤まで下がってボールを引き出し攻撃を組み立てるプレーメーキング能力や、積極的な守備参加など、プレミアリーグ時代から見せてきた万能性を発揮し、サンノゼ守備陣を最後まで苦しめた。これでMLSでの成績は5試合(うち先発4試合)で2ゴール1アシストとなり、プレミアリーグ得点王の実力を新天地でも遺憾なく発揮している。
「終わりではない、始まりだ」- グローバルブランドへの進化
ソン・フンミンが欧州でのキャリアを終え、アメリカへの移籍を発表した当初、多くのファンは残念がった。しかし、彼はこう語っていた。「まだ終わりではない。もっと皆さんに楽しんでもらえるように、より格好良く、より上手く、より幸せな姿をお見せします。これからもトッテナム出身という誇りを胸に努力し続けます。これは終わりではなく、始まりなのです」。彼の言葉は、現実のものとなった。
彼のLAFC移籍は、単なる一選手の移籍という枠を超え、MLSの歴史に新たな1ページを刻む「事件」として受け止められている。彼の加入が発表されると、チケット販売や関連グッズの売上が爆発的に増加。特に彼の背番号7番のユニフォームは、昨年の同時期と比較して売上が98%も増加したことが明らかになっている。
ホームデビュー戦のチケット価格は通常の2倍以上に高騰し、立ち見席まで完売。その人気はアウェーゲームでも変わらず、今回のサンノゼ戦が行われたリーバイス・スタジアムには、クラブ史上最多となる5万978人の観客が詰めかけた。その大半がソン・フンミンを見るために訪れたファンであったことは言うまでもない。
サッカーという枠を超え、アジア市場を代表する広告塔でもあるソン・フンミンを、スポーツとエンターテインメントが融合するアメリカ市場が最大限に活用している。彼の持つ親しみやすいイメージは、MLSのリーグ価値向上、視聴者層の拡大、そしてグローバル化という目標の中心的な役割を担っている。
かつて「成功したサッカー選手」だった彼のキャリアは、今や時代を象徴する「スポーツスター」へと進化を遂げている。ソン・フンミンが語った「終わりではなく、始まり」という言葉は、私たちの想像をはるかに超えるグローバルブランドの誕生を意味していたのかもしれない。