クリエイター・クラシック、ブラッド・ダルクが激闘を制し優勝。ゴルフ界に訪れる新たな波

PGAツアーの年間王者を決めるフェデックスカップ最終戦「ツアーチャンピオンシップ」の開幕を翌日に控えたジョージア州イーストレイク・ゴルフクラブ。トッププロ30名が熱戦を繰り広げるその舞台で、ゴルフ界を代表する12名のコンテンツクリエイターが集結し、第4回「クリエイター・クラシック」が開催された。
豪雨の中でのプレーオフと勝利のパット
アトランタ郊外の蒸し暑い気候は、大会の途中でモンスーンのような豪雨に変わった。そんな過酷なコンディションの中、人気YouTubeチャンネル「Good Good」のブラッド・ダルク氏が、プレーオフの末にショーン・ウォルシュ氏、ルーク・クォン氏、マイカ・モリス氏を退け、見事優勝を果たした。
優勝後、ダルク氏は次のように語った。「優勝できて最高の気分です。個人での競技ゴルフでは長い間勝てていなかったので、終盤は本当に緊張しました。プレッシャーにうまく対処できた自分を誇りに思いますし、ここイーストレイクでウイニングパットを決めることができました。」
プロを凌ぐクリエイターたちの人気
大会が開催された水曜日、イーストレイクGCでは異例の光景が広がっていた。練習場では、昨シーズン大きな飛躍を遂げた全米オープン覇者のJ.J.スパウンが猛暑の中で打ち込んでいたが、その彼をしのぐ人だかりができていたのは、初代クリエイター・クラシック王者であるルーク・クォン氏の周りだった。ファンは次々とクォン氏に写真撮影を求めていた。また、松山英樹選手とおなじみの彼のチームを取り囲む人垣よりも、クリエイターたちの一挙手一投足を撮影しようとする大勢のカメラクルーの方が目立っていた。
パッティンググリーンでは、ライダーカップの英雄トミー・フリートウッドや2019年全英オープン覇者のシェーン・ローリーが最終調整を行うすぐそばで、YouTuberやインフルエンサーたちが自身のカメラクルーを従えて、パットのラインを読んでいた。18番ホールで練習を終えようとしていた世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーの姿もあったが、フェンス沿いにいた子供たちは、プロゴルファーと「Good Good」のメンバーのどちらを見るべきか迷っている様子だった。
PGAツアーが描くゴルフの未来図
このクリエイター・クラシックは、PGAツアーとYouTubeが共同で開催するイベントで、今回で4回目を迎える。トッププロがシーズン最終戦でプレーするのと全く同じセッティングのコースで、12名のトップクリエイターが9ホールの真剣勝負を繰り広げるというものだ。
この現象に違和感を覚えるゴルフファンもいるかもしれないが、彼らはPGAツアーがターゲットとする新しい層ではない。PGAツアーは、これまでリーチできなかった膨大な数の視聴者にアプローチしようと試みているのだ。
PGAツアーのメディア担当上級副社長であるクリス・ワンデル氏は、その狙いをこう語る。「クリエイターたちは、それぞれ独自の制作チームと自身の声で、個々のオーディエンスに語りかけます。このイベントから生まれるコンテンツの量は驚異的で、我々が台本を用意したとしても決して作り出せないようなコンテンツが、ごく自然に生まれるのです。」
ゴルフ界の構造変化:ファンがファンのためにプレーする時代
ゴルフの歴史において、選手とファンの関係は明確だった。プロがプレーし、ファンが観戦する。しかし、安価な撮影機材と容易な動画配信プラットフォームの登場が、「ファンのためにプレーするファン」という第三の層を生み出した。
「ゴルフインフルエンサー」や「コンテンツクリエイター」と呼ばれる彼らは、何百万人もの視聴者の前で様々な形式のゴルフをプレーし、これまで敷居が高いとされてきたゴルフというスポーツの神秘性を解き明かし、より身近で開かれたものに変えている。
PGAツアーがこのイベントを始めたきっかけは、クリエイターたちが既にツアー周辺で選手へのインタビューや試合分析、独自の大会開催など、膨大な量のコンテンツを生み出していることに気づいたからだ。プロ選手だけでなく、カメラを持ったクリエイターたちもまた、ゴルフの未来を形作る重要な存在となっている。